なんだそりゃ、と思うかもしれませんが……。
仮名が現在の一音一字に整理されるより以前は、ひらがなにはひとつの音価に対して異なる漢字に由来する複数の仮名があった。「尓」に由来する「に」とか「者」に由来する「は」(蕎麦屋の暖簾でよく見られるやつ)など。こんにちそれらは変体仮名と呼ばれている。
そういう変体仮名のなかに、「八」に由来する「は」がある。カタカナの「ハ」と同じ形なんだけど、仮名文字の文章中に普通に使われてるんだからひらがなだ。現在の仮名の中にも、「り」と「リ」、「へ」と「ヘ」のように、ひらがなとカタカナとで同じ見かけをしているものがある。「八」に由来する「は」もそういうもののひとつということになる。
ところが、展示会なんかの解説パネルや、ものの本では、この「は」を「ハ」の字形で活字にしているのをよく見かける。これってどうなの?
現代の読者のために翻刻しているのなら、これは「は」で起こすべきだと思うのだ。変体仮名もそのまま起こすのなら、「尓」に由来する「に」や「者」に由来する「は」もそうすべきで、「は」だけ特別扱いする理由はない(あるのか?)。たまたま「ハ」の活字がカタカナにあったから入れただけなのだろうか。しかしそれで誰が得するというのか。展示会などでこれを目にした人たちは普通「ハ」はカタカナだと思うから、「どうしてこの書の『は』はカタカナで書いてあるのかな?」などの余計な疑問を抱かせるだけだと思うんだけど。
女「どうしてこの本の『は』はカタカナで書いてあるの?」
男「それはね、昔の『は』にはカタカナの『ハ』と同じ形のひらがなもあったからなんだ」
女「まあすてき、ユウ君ったら、なんでも知っているのね」
とか、デートで使えるようにそうしてるのだろうか。
つまりその、なんか自己満足っぽくない?
現代のようにコンピュータで扱うようになると、これは検索などの都合からしてもなおよろしくない。文字コード U+30CF(ハ)は「KATAKANA LETTER HA」という「意味」を担っているからだ。同じようなことは、「ミ」の字形の「み」なんかについてもいえる。
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