2009年4月27日月曜日

なお、すでに知られているように、当時の京都語のアクセント体系では、同一の語源をもつ単語のアクセントは少なくとも第一アクセントだけは同一であったとされている(金田一春彦氏の研究)。従って、一つの語のアクセントを知れば、他の語のアクセントを推定できる場合が少くない。例えば、小舟(ヲブネ)のアクセントが名義抄によって、上上○と知られれば、小(ヲ)のアクセントは上であるから、それによって、小笹(ヲザサ)、小塩山(ヲシホヤマ)、小倉山(ヲグラヤマ)、小忌(ヲミ)などの第一音節「ヲ」は、すべて上のアクセントであることが知られる。

また、今日の東京アクセントでは「起きない」のオは、オナイとなって低いが、「起きた」の場合はキタとなって高い。このように一つの動詞でも、活用形によって動詞の第一アクセントが変ることがある。しかし、当時の京都アクセントでは、同じ語ならば、第一音節のアクセントは活用形によって変わることがない。例えば「起く」という動詞ならば、「起きず」の場合でも、「起きたり」の場合でも、いずれもオは平声である。このように、動詞・形容詞などの終止形の第一アクセントが上ならば、活用形の如何を問わずその語の第一アクセントは上であり、終止形の第一アクセントが平ならば、活用形の如何に関わらずその第一アクセントは平であったから、終止形のアクセントを知れば、他の活用形の第一アクセントは知ることができる。

(大野晋『仮名遣と上代語』岩波書店、1982年、p. 22)

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