例の大工の食事の話は、枕草子の能因本に含まれているもので、三巻本には存在しない段だということを以前コメントで教えていただいた。運良く、能因本を底本とする小学館の「日本古典文学全集」版『枕草子』は地元の図書館に架蔵されてました。(小学館はその後刊行された「新日本古典文学全集」では三巻本底本に切り替えられている。)
さて、最近、笠間書院から能因本を底本とした新しい枕草子が出てるのを見つけた。笠間文庫「原文&現代語訳シリーズ」松尾聰、永井和子著『枕草子[能因本]』(2008年)である。校訂者は日本古典文学全集と同じ方々で、日本古典文学全集版の「後継版」といえる。
「『三巻本』が一般化され『能因本』のテキストの入手がやや困難となっている現状を鑑み、ここに同じく能因本を底本とする『完訳 日本の古典「枕草子」一・二』を一冊とし、本書を刊行した次第である」と、日本古典文学全集での能因本収録にあたっての解説とほぼ同じ主旨のことが書かれているのがおもしろい。
日本古典文学全集にあった解説、年表、関係系図も収録されている。日本古典文学全集には絵がやたらモダンな『枕草子絵巻』も所収されていたが、これはない。「能因本には見えない、三巻本系統の章段」も入っている。
バージニア大の電子テキスト版『枕草紙』には、クレジットに Publisher として "Tokyo: Yuhodo, 1929" と書かれている。ウィキペディアの記述を信用するなら、これは「昭和四年(1929年)有朋堂刊の能因本系本文を底本とする」ものらしい。「工匠の物くふこそ」云々も入っているね。
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