2009年6月22日月曜日

たそたそ

男の云く、「去来《いざ》給へ。伯父父《をぢちち》の許に将《ゐて》奉らん」と。児、何心も無《なく》打□て、「母堂に告奉らん」と云へば、男、「人に不令聞《きかしめ》で、密に御《おはし》ませ」と云云。児、嬉気に思て走り行《ゆく》後ろ手の、髪のたそたそとして可笑気《をかしげ》なるを見《みる》に、かはゆく難為《しがたく》思へ共、人に憑《たのも》し気をし見えんと思へば、木石の心を発《おこ》して、馬に鞍置きて曳将《ひきゐて》来ぬ。

(巻第二十六「陸奥の国の府官大夫の介の子の語 第五」池上洵一編『今昔物語集 本朝部(下)』岩波文庫、p. 36)

古文を読んでいると、いまでは使われなくなってしまった擬音語・擬態語に出くわすこともある。走っていく子供の髪の揺れる様子をして「たそたそ」と言っているのだけど、これなんていかにもで、ああ、たしかにたそたそしてるよなあ、と思う。

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