2009年9月17日木曜日

古今和歌六帖

『古今和歌六帖』という歌集がある。これは万葉以来の秀歌数千首を「春」「夏」「山」「恋」といったテーマ別に分類して収録している本で、歌集というか、歌学の参考書みたいなアンソロジーだ。いま四つほど題材の例を挙げたけど、じつはその分類はかなり細かく、ほかにはたとえば「衣がへ」「星」「炭竈」「鮎」「ないがしろ」「一夜隔てたる」「二夜隔てたる」「来れど逢はず」等々と数百に渡ってある。「こういうシチュエーションを詠むときは、ええっと……」というときに引ける、かなり実用志向の本だったのだろう。

だからこれは平安時代の和歌を知るのにたいへん重要な本だと思うんだけど、活字でそれを読もうとするとこれがなかなか難しい。いま売られている古典文学の全集にはどれにも入ってないと思う。歌自体はほかの勅撰集や私家集にあるものばかりだからかな。しかし、平安貴族のネタ帳という意味でそのありさまには興味がわくところ。過去には久松潜一、山岸徳平監修『校註新訂 日本文學大系第十三巻』(風間書房、1955年)や、宮内庁書陵部編の上下二冊からなる『古今和歌六帖』(養徳社、1967, 1969年)などが出ていたようだ。

さて、風間書房の日本文學大系版が幸い図書館にあったので、さっそく手にしてその解題を読んでいたら、こんなふうに書いてあった。

撰者の漠然たるが如く撰時も明らかでない。集中の作者を以て契沖は寛和の頃(一六四五—四六)と推定したけれども、蜻蛉日記に引用したと見られる古今六帖の和歌などから推すに、或は天徳、應和の頃(一六一七—一六二三)の頃のものでは無からうかと思ふ。蓋し源順集によれば、天暦五年に次の如く梨壺に和歌所を置かせられた。

(久松潜一、山岸徳平監修『校註新訂 日本文學大系第十三巻』、p. 10、風間書房、1955年)

流して読んでたが、ふと年代の記述で目を疑った。一六四五? 『古今和歌六帖』は平安時代の書物のつもりでいたけど、もしや自分はとんでもない思い違いをしていたのか? ……と、焦ったが、その後すぐに気づいた。これ、皇紀だ。うおー。古い本とはいえ戦後だよ。国文学の本はすげえな。

と、内容と関係ないところで驚きましたとさ。

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